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現場経験を通して得られた工具や道具の使い方を現役の現場監督の私が惜しみもなく、みなさんに伝授します。

工具の使い方を知って、
工事現場で頼られる人間になろう。

グラインダーの使い方

グラインダーの概要

監督が教える工具の使い方削る工具>グラインダーの使い方


グラインダーとは、削り取るための刃を高速回転させる機械のことです。

工事で使うものは特に「ディスクグラインダー」と呼びますが、他に変わるものが無いため、みんなグラインダーと呼んでいます。

グラインダーは「サンダー」と呼ぶ人も結構います。

サンダーは木工系の削る道具によく使われる言葉です。
例えば、紙やすりはサンドペーパーとか言ったりもしますよね。

鉄工の場合だと500mのペットボトルのサイズくらいの機械を使用しています。

鉄工の場合、高速回転させた刃で鉄を削り、きれいに形を整える整形を主に行います。

削って形を整えるだけでなく、サッと表面を削れば鉄の表面をピカピカにすることもできます。

家庭で鉄を加工することはあまりないと思いますし、使用時の騒音がすごいので近所迷惑になるかもしれないので日曜大工ではあまり使わないかもしれません。

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使用方法と注意点

鉄工では、鉄を少しずつ削って整形するのと、溶接時にスパッタという必要ない金属が飛び散って溶接部周辺に付着するのでそれを除去するのに薄くグラインダーをかけて使用したりします。

溶接線のまわりに付着した粒々が「スパッタ」です。

ワイヤーブラシ」という手動で溶接線をきれいにする工具ではスパッタを完全には除去できません。

スパッタとは、溶接時に勝手に周辺に飛び散ってしまった金属のことで全く不要なものです。

トイレでおしっこをして、便器の外に飛び跳ねたおしっこはふき取って流しますよね?
飛び跳ねたものは全くの不要なものなのです。
それはおしっこもスパッタも同じです。


グラインダーで溶接線をきれいにすれば、
溶接線も見れるようになるし、周辺のスパッタも取り除けるので一石二鳥です。

薄くグラインダーをかけて、表面のサビなどを落とすことを「バフがけ」と言います。

薄く表面をバフ掛けしてもサビだけでなく、表面を削りすぎてしまう場合もあります。
削りすぎを起こしたくない場合、刃を交換してサビのみを落とす専用の「カップワイヤーブラシ」を使用してバフ掛けします。

これがカップワイヤーブラシです。


ワイヤーブラシをグラインダーで高速回転させて使うといった感じです。


また溶接すると、溶接部を中心に内側に曲がろうとする力が発生することになっているので、それを抑えるために治具(じぐ)というパーツを仮付けして歪みをなくすのですが、あとで治具を取り外した時に仮付部の溶接が残るのでそれをグラインダーをかけて平らにしたりします。

使用方法は、グラインダーの底の電源をONにして刃を回転させます。

両手で本体部分を持って切削部に刃の平の部分を当てていきます。

使ったことない人が最初に電源をONにすると、右か左かにグラインダーが動こうとする力に驚かされるでしょう。
結構パワフルに勝手に動こうとする力にびっくりすると思います。

さらに金属に刃の平の部分を当てると、もっと強く右に流れようとする力が働くので、しっかりグラインダーを両手で持っていないと、手から離れた時にパーンと暴れる可能性もあるので危険です。


ガス切断で鉄板に穴をあけて、その穴のふちをきれいにグラインダーで削っているときの写真です。

見方によっては結構きれいです。
事実、このグラインダーの火の粉を音楽に合わせて飛ばして見せるパフォーマンスを行っているパフォーマーもいます。

鉄を削るので、これくらいの火花が出ます。
この火花は全て削り取られて高温になった鉄のカスです。

こんな感じで飛び散りますので、グラインダーを使用する人は安全ゴーグルを必ず装着して作業をします。

この火の粉が目に入ると場合によっては目に深刻なダメージを与える可能性があります。

実は私も過去に一度だけ安全ゴーグルをしていたにも関わらず、この火の粉が目に入ったことがあります。

目の中が熱くなったので、火の粉が目に入ったと一瞬でわかりました。

そういう場合は水でとにかく目の中を洗いまくります。

両手でお椀を作って水道で水を注ぎこんで、お椀を目に当てながら、目をパチパチしまくります。

鉄粉が目の中に残って徐々に目の中で錆びるのが一番怖いので、鉄粉が目に入った時点で鉄粉が取れたと確認できるまで目を洗った方が良いです。

目の中で錆びると失明の危険があります。



グラインダーを使えばわかりますが、
「両手で持ってないとあぶねえな」
という感覚が初めての人でもわかると思うので、必ず両手で持って作業してください。

片手でグラインダーを使用している人はまず皆無です。

作業を終えたら電源を切って、刃の回転が止まるまでグラインダーから目を離さないようにしてください。
あるいは電源を切って、切削部に当てて回転を止めるというのが一般的です。

グラインダーを使用しない時は必ず電源のコードを抜きます。
休憩時間とか誰も人がいなくなる時やほんの少しでもグラインダーのもとを離れるときも電源のコードを抜きます。
人が手に持っていない時にグラインダーの電源が何かの拍子に入ってしまったら、機械が暴れまわるように動くと思われるので近づくのも危険な状態になります。
これは現場での常識です。

グラインダーの使用自体に資格は一切必要なく素人でも使用を始めることができますが、
「グラインダーの刃を交換するとき」は「切削砥石の交換特別教育」という講習を1日受けないと交換してはいけないようになっています。

その講習会でグラインダーの構造やグラインダーの刃の構造も教えてくれるので、グラインダーを使おうと思ってる人は必須で特別教育を受けておくべきでしょう。

特別教育は色んな労働関係の団体が実施しています。
本当は社内に教える免許を持った人がいて、その人が社内で教育することを特別教育と言いますが、その場合、その社内で働くときでしか特別教育の証明を使えません。

一方、公的な機関で特別教育を受けて証明書を受け取ると、どの場所でも特別教育を受けたことを証明することができます。
出張などで色んな現場に行って作業する人は公的な機関で特別教育を受けるといいでしょう。

溶接線をバフ掛けするときですが、以下のように行います。

際の部分には錆やゴミが貯まっていてよく見えないのでサッとグラインダーでかけるとよく見えます。
グラインダーがないときはワイヤーブラシで磨いてもきれいになってわかります。

黄色の部分に力強く当ててしまうとアンダーカットという溶接線の欠陥になってしまうので、当たるか当たらないかくらいの弱い力で当ててから刃を寝かせます。


グラインダーは刃が高速で回転する機械なので、使用には結構な危険を伴います。

袖口がひらひら動くような服装で作業すると袖が巻き込まれて腕ごと、高速回転の刃に巻き込まれたり、刃の回転が止まらないうちに目を離してしまったら足を刃で切ってしまったなど、工事現場でもグラインダーによるケガというのは結構絶え間なくあります。

いくら安全を気をつけていてもこういう事故は定期的に全国的に起きていますので、細心の周囲を払って作業をします。


グラインダーを長時間使用していると、振動によって手がぴりぴりしびれたようになり、あまり良くありません。
振動を抑える手袋とかも販売されているのでそれを使用するのもいいかと思います。(ただし、現場でそういう手袋をつけている人を見たことは一切ありません)

また、グラインダー使用時には結構な騒音が出ます。
パチンコ屋の店内ほどでは無いにしろ、数十分使用していると耳が「キーン」とした状態になるので、使用時に耳栓を使っている人も多くいます。


500ミリのペットボトルくらいのグラインダーは通常そのまま「グラインダー」と呼ばれますが、デカいサイズのグラインダーは高周波グラインダーと言います。

左が高周波グラインダー。
右が普通のグラインダー。

高周波グラインダーは、ふたまわりくらいデカいので、それと対比するために通常のグラインダーのことを「ベビーグラインダー」とか「ベビーサンダー」とかさらに略して「ベビー」と呼んだりする人もいます。

グラインダーの刃は普通のゴミで捨てることができません。

産業廃棄物として届け出を出してから捨てることになります。
仕事でやっている場合は、かかりつけの産業廃棄物処理業者いると思いますが、日曜大工で使って刃を捨てるとなると、めんどくさいと思います。

グラインダーの刃は、目が詰まって表面を削る性能が落ちるのを防ぐために刃自らが少しずつボロボロ削れることで切削面を常に最新の刃になるようにしていて、目が詰まらないようになっています。

鉄を削りつつ、刃も少しずつ削れて円が小さくなっていきます。

削れていった刃は大体写真のように真ん中くらいの時に捨てます。

未使用時から比べたら3分の1程度までに擦り減ったら捨てます。
一番左は使い過ぎで、高速回転している刃が破裂して飛び散る可能性があるので、使い過ぎに注意です。


刃を交換するときは、この後ろのボタンを押しながら刃を手で回すと、刃が回転しなくなるポイントが出てきます。



刃が動かない状態で、この左の器具(ロックナットレンチ)のでっぱりをグラインダーの中心のくぼみ(ロックナット)に入れて、回転させると刃がはずれますので、それで交換します。

しかし、これは講習会を受けないとやってはいけない作業だし、講習会で上の写真のようなことを実習で習うのでここで覚える必要は一切ないです。


ロックナットレンチという器具があることだけ覚えておきましょう。





グラインダーの刃は色々種類がありますが、「切削砥石の交換特別教育」の時に刃については色々教わると思うので、そこで教わってください。

このMAX72m/sくらいの物を使用する根拠も講習会で説明してくれます。


グラインダーの刃の入っているダンボール箱にも注意書きが記載されています。

死亡という言葉も使用して危険であることを注意喚起しています。


購入方法と値段

グラインダー本体は、電源コードにつないで使用する物が5000円~15000円くらい、充電式のどこでも持ち運び可能なものが25000円~30000円くらいです。

電源コードにつなぐものはコードをいちいち取回しながら使わないといけないので段取りの時間がかかりますが、電流の弱さによって刃の回転数が落ちず、長い時間使用できます。

充電式の物は充電に1時間くらいかかるのと、充電池のヘリによって刃の回転数が落ちたり、15分くらい使うとすぐに電池切れになってしまうので1日中グラインダーを使用して回らないといけない場合は非常に効率が悪いです。


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独立切子士として
切子の工房を立ち上げました。切子工房 箴光
切子工房 箴光(しんこう)

転職したとはいえ、工事現場で工具の使い方を学んだ経験は江戸切子を作る際にとても役に立っています。


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